「マッチングって聞いたことはあるけど、正直よく分かっていない」——そう感じている4年生の方は、決して少なくありません。でも安心してください。マッチングの骨組みは、実はとてもシンプルです。
この記事では、研修医マッチング(医師マッチング・医学部マッチングとも呼ばれます)の仕組みから、制度理解→病院選び→採用試験→希望順位登録→結果発表までの流れを、最短5分で理解できるようにまとめました。まずはこの記事で、マッチング全体の地図を頭に入れてしまいましょう。
研修医マッチング(初期研修マッチング・医師マッチング・医学部マッチング)とは?制度の目的
研修医マッチングとは、医学生が卒業後の初期研修先(臨床研修病院)を決めるための全国共通の仕組みです。正式名称は「医師臨床研修マッチング」で、「初期研修マッチング」「医師マッチング」「医学部マッチング」と呼ばれることもありますが、いずれも同じ制度を指しています。
マッチングの仕組み:希望順位を「正直に」出すのが最適な理由
マッチングの結果は、学生が提出する「希望順位表」(行きたい病院を1位から順に並べたリスト)と、病院側が提出する希望順位表を、ゲール=シャプレー・アルゴリズムと呼ばれる方式で組み合わせて決まります。
- A病院
- B病院
- C病院
組み合わせ
- 学生X
- 学生Y
- 学生Z
数式の細かい説明は省きますが、この仕組みのポイントは一つだけ覚えておけば十分です。
それは、「本当に行きたい病院を、そのまま正直に1位から順番に並べるのが、自分にとって最も有利な戦略になる」ということです。
「ここは倍率が高そうだから下の順位にしよう」といった駆け引きは、基本的に必要ありません。
マッチングは年々厳しくなっている
医師臨床研修マッチング協議会の発表データを見ると、マッチングの競争は年々厳しさを増していることがわかります。この10年、マッチング参加者数は9,400〜10,200名程度でほぼ横ばいですが、第1希望の病院にマッチできる学生の割合は80.7%(2015年度)から60.6%(2025年度)まで低下しました。
その背景には、学生1人あたりが希望順位表に登録するプログラム数の増加があると考えられます。10年前は平均2.85プログラムでしたが、2025年度には5.22プログラムとほぼ倍増しており、「アンマッチを避けるために候補を多めに登録しておく」という動きが広がっていることがうかがえます。
アンマッチ率(1次募集で研修先が決まらなかった学生の割合)は、2019〜2024年度にかけて10%前後の水準で推移していましたが、2025年度は7.68%まで下がり、2015年度(7.79%)に近い水準に戻っています。今後も年度によって変動する可能性があるため、引き続き注視が必要な指標です。
詳細な数値は下表の通りです(グラフと同一データ)。
| 年度 | 参加者数 | 平均登録 プログラム数 | 第1希望 マッチ率 | アンマッチ率 |
|---|---|---|---|---|
| 2015年度 | 9,421名 | 2.85 | 80.7% | 7.79% |
| 2016年度 | 9,631名 | 3.01 | 79.1% | 7.53% |
| 2017年度 | 9,969名 | 2.99 | 78.8% | 9.49% |
| 2018年度 | 10,063名 | 3.17 | 75.8% | 8.56% |
| 2019年度 | 10,075名 | 3.25 | 73.7% | 10.25% |
| 2020年度 | 9,876名 | 3.44 | 71.1% | 10.20% |
| 2021年度 | 10,024名 | 3.66 | 68.2% | 10.63% |
| 2022年度 | 10,207名 | 3.84 | 66.3% | 11.87% |
| 2023年度 | 10,202名 | 4.35 | 64.3% | 12.09% |
| 2024年度 | 10,136名 | 4.62 | 62.5% | 10.59% |
| 2025年度 | 9,902名 | 5.22 | 60.6% | 7.68% |
※出典:医師臨床研修マッチング協議会「研修医マッチングの結果」各年度記者発表資料
こうした状況を踏まえると、「本当に行きたい病院だけを1つ登録する」よりも、複数の候補を用意しておくことが、これからのマッチングではより重要になってきています。
マッチングスケジュール:4年生から初期研修開始まで
マッチングというと6年生の話だと思われがちですが、実際には4年生からの3年間、少しずつ関わっていくものです。学年ごとの大まかな流れを見ていきましょう。
※学年ごとの時期・状況はあくまで一般的な目安です。特に6年生の試験・登録・発表の具体的な日程は年度によって前後するため、正確な日付は必ず医師臨床研修マッチング協議会の公式サイトで確認してください。
※病院によっては6年生の夏休みにも見学を受け付けていることがありますが、この時期にはすでに見学受付を締め切っている病院も少なくありません。「6年生の夏も見学できるはず」とあてにしすぎず、上記のタイミングのうちに気になる病院は見ておくのが安心です。
病院見学のチャンスは、実は多くない
まず知っておいてほしい大事な事実があります。マッチングに向けて病院見学に行けるタイミングは、実は驚くほど限られているということです。
実習(ポリクリ・クリクラ等)期間中は、見学のために大学(実習科)から休みをもらう必要があるため、平日にまとまった時間を確保するのは簡単ではありません。
上の年間スケジュールで触れた通り、4年生から6年生になるまでの間でじっくり見学できるチャンスは、実質3回(4年生の春休み・5年生の夏休み・5年生の春休み)しかないと考えておいたほうがよいでしょう。
1回を逃すと、次のチャンスは数ヶ月〜半年先になってしまいます。
つまり、4年生のうちに「見学したい病院」の候補をある程度決めておかないと、限られた3回のチャンスを有効に使えないまま6年生を迎えてしまうことになります。
4年生の今、まだ先の話に感じても全体スケジュールを知っておくことが大切なのはこのためです。
マッチングの流れ①〜④|病院選びから結果発表まで
マッチングの流れ①:病院を選ぶ
年間スケジュールのうち、学生にとって最も時間をかけることになるのが「病院選び」のフェーズです。症例数や研修環境、給与・待遇など、比較すべきポイントは一つではありません。特に「大学病院か市中病院か」は多くの学生が最初に迷うポイントで、それぞれにメリット・デメリットがあります。
マッチングの流れ②:採用試験(面接・筆記)を受ける
希望する病院が固まってきたら、次は採用試験です。多くの病院で面接が実施され、病院によっては筆記試験や小論文が課されることもあります。
マッチングの流れ③:希望順位を登録する(9月)
採用試験を終えたら、いよいよ希望順位表の登録です。「本当に行きたい順」に正直に並べるのが基本ですが、実際に順位を決める段階になると、「本命」と「受かりやすさ」の間で迷う学生は少なくありません。登録期間の途中では「中間公表」として、各病院の希望者数の状況が発表されます。
マッチングの流れ④:結果発表を確認する(10月)
希望順位登録が締め切られると、その後マッチング結果が発表されます。結果発表後は、内定先の病院への連絡や必要書類の準備が必要になります。
なお、万が一希望が叶わなかった場合(いわゆる「アンマッチ」)も、その後に二次募集などの機会が用意されています。慌てずに次のステップに進みましょう。
4年生の今、何をしておくべきか
ここまで読んで、「まだ自分には早い話だ」と感じた4年生の方もいるかもしれません。たしかに、採用試験や希望順位登録を行うのは6年生になってからです。
ただ、5年生になると病院見学や比較検討で忙しくなる学生が多いため、4年生のうちに全体の流れを知っておくと、いざ動き出すときにスムーズです。
CBTやOSCEなど学内の試験スケジュールは大学によって差があるため、この記事では特定の時期を前提にした書き方はしていません。ご自身の大学のカレンダーと照らし合わせながら、無理のないタイミングで少しずつ準備を進めてみてください。
まずは今すぐできることとして、気になる病院を会員登録してお気に入りに入れておくのがおすすめです。5年生になって本格的に比較検討を始めるときに、情報をゼロから探し直す必要がなくなります。
よくある質問
Qマッチングとはいつから始まりますか?
Q「研修医マッチング」「医師マッチング」「医学部マッチング」は同じものですか?
Qマッチングに参加しないとどうなりますか?
Qもしマッチしなかった(アンマッチ)場合はどうなりますか?
出典
・厚生労働省「医師臨床研修制度」
・医師臨床研修マッチング協議会 公式サイト